仕事(退職・転職)

児童養護施設について知ることのできる本たち

40代半ばで他業種から児童養護の世界に転職しました。

残念ながら家庭の事情で退職することになってしまったのですが、かけがえのない貴重な時間を過ごさせていただきました。

百聞は一見にしかず

経験しなければわからなかったことがたくさんありました。

それでも、できる限り転職前に児童養護施設について知りたいと手に取った本たち

カテゴリーごとに紹介しながら、実際に働いてみて感じた事を合わせてお伝えしたいと思います。

児童養護施設の世界を垣間見ることのできる本たち

大久保さん
大久保さん
「私たちは信頼されるにたる大人だろうか」。その問いを分かち合える社会であってほしい。

ノンフィクション『児童養護施設の子どもたち』

まず一番におすすめしたいのは、児童養護施設に80日間泊まり込み、子どもたちの声に耳を傾けた渾身の記録、大久保真紀さん著『児童養護施設の子どもたち』です。

「ひとりの人間として試されている」

第3刷追記として一番最後のページに刻まれた言葉です。

実際に現場に立ち、日々体感。

あらためて、この言葉のリアルを振り返っています。

それぞれの子どもたちの生い立ち、背負っている課題に、情けのないほど揺さぶられました。

実際に、新聞記者である大久保さんが、施設の子どもたち、そして母親たちの声を届けようと、この国の社会的養護を取り巻く現状を伝えるノンフィクションの記録です。

現場を体験してから読み返してみて、あらためてリアルにせまってくる子どもたちの姿、その背景…。

生きた記録が詰まった渾身の記録です。

残念ながら現場に立つことはできなくなったのですが、「信頼にたる大人かどうか」という問いを忘れることなく、何らかの形で社会的養護を支持する環境をつくる大人として生きていきたいとあらためて思っています。

小説・物語を通した児童養護施設の世界

小説の中で一番のおすすめは、有川浩さんの『明日の子供たち』です。

児童養護施設で育った女子高校生から、児童養護施設の物語を書いてほしいという手紙をもらって、現場に足を運んで、エンターティナー有川浩さんが、リアルを描いた物語。

新人、中堅、ベテラン、それぞれの施設職員の描かれ方も素晴らしく、18歳以後、「自立」を迫られ、居場所を失う子どもたちを取り巻く社会の課題、その後が丁寧に描かれています。

その他、児童養護施設が舞台となった小説でおすすめなのは…

朝井リョウさん『世界地図の下書き』

佐川光晴さん『おれのおばさん』シリーズ

優等生の東京生まれの中学生が、おばさんの運営する北海道の施設に入所することになったところから物語ははじまります。主人公の成長とおばさんの半生を追うドラマがシリーズで描かれています。

 

施設出身者作のマンガ、りさりさん作『いつか見た青い空』『きみとうたった愛のうた』

施設で育つ子どもの目線から、児童養護施設での暮らしがかわいいタッチの絵柄で描かれています。

続編では、施設から家庭に引き取られた後の物語が描かれています。

「ひとりの人間として試されている」

信頼されるにたる大人でありたい、と児童養護施設の仕事に挑戦した筆者ですが、情けないほどに「試され」、そして踏ん張り切れず、宿直勤務を続けることのできない事情で現場を去ることになってしまいました。

あらためて、半年間のかけがえのない日々を思い返しながら、ずっとしてみたかった養育職に就く前、少しでも現場に近づきたいと手にした本たちをあらためて読み返して、この記事を書きました。

『児童養護施設の子どもたち』に出てくる少女たちと、出会った子どもたちが重なります。

本書の中では、心ない職員により運営されている施設での悲しい経験が描かれていますが、筆者の勤めた施設は、「あたりまえの家庭的養育を」という考えで、真摯な先生方により営されており、よい職場で働かせてもらえたと思っています。

それでも、子どもたちの立場からすれば、なぜ自分はここで育たねばならなかったのか、言葉にならない苛立ちと思春期特有の難しさをそれぞれが抱えていたのではないか。

どうか、無事に生き抜いてほしい、笑顔で巣立ってほしいとあらためて願っています。

ー子どもには力があるー

…子どもたちの抱える問題は重く、一方で、彼らの思いは切なく、知れば知るほど心が痛みます。しかし、子どもたちの人生を代わって生きることはだれにもできません。彼ら自身が、自分の頭で考え、自分の足で歩いていく以外に道はありません。彼らがその気にならない限り、彼らが自分の人生を切り開くことはできないのです。
彼らがその力を、彼らが本来もっている、その生きる力を、引き出せるかどうかは、社会に、大人側の対応にかかっているように思います。信頼できる大人と出会い、さまざまな試し行為をし、失敗を経験し、3歩進んで4歩退き、2歩進んで1歩退きしながら、彼らは力をつけていきます。

その過程に必要なことは、児童養護施設など社会的養護の支援者たちが、ただただ寄り添って待つこと。それしかないように感じます。ですが、何があっても寄り添い続けることはそう簡単なことではありません。また、待つということもそう容易なことはありません。

…子どもたちの「力」を信じ、未来を見つめていける社会であることを心から願わずにはいられません。

児童養護施設の子どもたち おわりに より

なんちき
なんちき
子どもたちと過ごしたあの時間、自分は信頼されるにたる大人だっただろうか…。

現場に立っていた時はその時の精一杯でした。

結果としては「仕方がない」事情があったとはいえ、わずか半年で子どもたちとの暮らしの場から去ることになってしまいました。

「寄り添い続けること」「待つこと」ができなかった情けない自分をひきうけながら、出会った子どもたちを何等かの形で応援できるよう、今後もこの問いに向き合いつづけていきたいと思います。

最後まで読んでくださりありがとうございました☆