『人生100年時代』
この言葉を聞いてあなたはどう感じますか?
と、心から言えたらきっと素敵です。
できることなら「健康で長生きしたい」というのが、当然の願いですが…
「長生きが最大の危険因子」である「認知症」は、要介護の原因疾患1位。
2025年には、65歳以上の認知症患者数は700万人(5人に1人)、予備軍を含めると1000万人を超えるという試算もあります。
誰もが無関係ではいられない「認知症」とどう向き合うか
【人生100年時代】に認知症と共に生きる心得とは?
認知症医療界のナガシマシゲオこと、長谷川和夫 医師が、自ら認知症であることを発表されたのは2017年10月でした。
今回は、認知症専門医の長谷川和夫さんが認知症当事者として執筆された、「人生100年時代の心得を知る」2冊の紹介です!
【人生100年時代の心得】
●「ボクはやっと認知症のことがわかった」公表の理由とその後
●簡易認知症検査「長谷川式スケール」を知っていますか
●「認知症になった認知症専門医」100の言葉から
●もしも自分が家族が「認知症」になったらー読後感想ー
☆認知症の基礎知識、認知症予防(認知症にならないための心得)についての記載はありません。誰もが認知症になる可能性があるという前提で作成された記事であることを了承ください。
【人生100年時代】に「認知症」と共に生きる心得
ボクはやっと認知症のことがわかった
自分は認知症であると自覚して公表したのは二〇一七年十月、八十八歳のときです。認知症は、言語や近くに関する脳の機能低下が成人になってから起こり、日常的に生活に支障をきたしている状態をいいます。最大の危険因子は加齢ですから、世界の中でも長寿を誇り、「人生百年時代」と言われる日本では、もはや誰もが認知症になる可能性があるといえます。
・・・
あれから二年が過ぎて、かなり症状が進んできているとの自覚はあります。ただ人間は生まれた時からずっと連続して生きているわけですから、認知症になったからといって、周囲が思うほど自分自身は変わっていないと思う部分もあります。そもそも認知症になったからといって、突然、人が変わるわけではありません。昨日まで生きてきた続きの自分がそこにいます。『ボクはやっと認知症のことがわかった』/はじめに より
昨日まで生きてきた続きの自分がそこにいます
「あたりまえ」のこの言葉にはっとさせられました。
「確かさ」が揺らぐことで、どうもおかしいと気づく。
自分がやったこと、やらなかったことに対しての確信がもてない。
そうした不安の中で、長い臨床経験から、「これは年相応のもの忘れではなく、認知症にちがいない」と思うに至ったと綴られます。
2017年10月 認知症ケア講演会の場で
「みなさんの前でこういうと(主催者が)困るかもしれないけれど、じつは(ボクは)認知症なんですよ」
自然に出てきた言葉でした。自分が認知症と自覚してからは、誰もがなる可能性があり、認知症になっても「人」であるのに変わりはないこと、この長寿時代には誰もが向き合って生きていくものだということ、そして、認知症になっても普通の生活を送ることが大切だということを伝えたいという気持ちが、心の底にありました。だから、講演会で話すうち、「ボクもこのとおり、普段どおりの生活を送っていますよ」ということを、その場のみなさんにお伝えしたいと思ったのです。みなさん、とても真剣に、そして温かく受け止めてくれました。
当時、ボクは八十八歳。日本では、ボクのように長生きする人が増えています。
認知症は暮らしの障害
認知症の本質は、「暮らしの障害」「生活の障害」だということ、だからこそ、最も重要なのは、周囲が、認知症の人をそのままの状態で受け入れてくれることです。
「認知症です」といわれたら、「そうですか。でも、大丈夫ですよ。こちらでもちゃんと考えるから、心配ありませんよ」と、目線を同じに、その人の立場に立って、さりげなく支援の手を差し伸べることが大事だと伝えてくださっています。
パーソン・センタード・ケア
●「あちら側のひと」と区別して置いてきぼりにしないこと
●「待つ」「時間を差し上げる」という向き合い方
●役割を奪わないこと
「パーソン・センタード・ケア」の視点で、さりげなく手を差し伸べるとはどういうことかを、丁寧に伝えてくださっています。
だいじょうぶだよ
認知症になると、周囲はこれまでと違った人に接するかのように、しかったり、子ども扱いしたりしがち…。
だけど、本人にしたら自分は別に変わっていないし、自分が住んでいる世界は、昔も今も連続している。確かに失敗や間違いは増えるけれど、認知症でない人でも間違えることはある。
認知症の人は「怖い人」ではなく、みんなと同じ世界に住んでいて、一緒に楽しく暮らしていきたいと思っているんだよー。
子どもたちに心で感じてほしい、そして、認知症に対する理解を大人にも読んでもらって広めたいと、絵本『だいじょうぶだよーぼくのおばあちゃんー』を作成されたそうです。
認知症診断のものさし「長谷川式スケール」
改訂長谷川式簡易知能評価スケール
[HDS‐R: Hasegawa dementia scale-revised]
初版1974年に公表された、認知症診断のものさしとなる認知機能検査。
1991年に改訂版が出され、現在でも全国の医療・福祉機関で広く使用されている。
9つの質問で構成。高齢者の体力、身体機能を考慮し、短時間で行え、検査者に左右されない簡便さが特徴。
開発者の長谷川先生は言わずもがな、スケール内容をすっかり暗記してしまっているため、自分自身が必要な状況になった時は、別の検査を使用してもらわないといけません。
「簡単すぎる質問もありますが、どうぞ気を悪くなさらずに気楽にお付き合いください」こう前置きをしつつ、10分ほどで実施させていただく、今後の療養、リハビリテーションのヒントをいただくための「入口」の検査です。
医療関係者の中では40年以上にわたり、その方の認知機能の状態を知る「共通言語」ツールとして活用されてきました。
その開発者である長谷川氏が「認知症」であることを公表された。
公表時88歳という年齢を考えると、全く不思議ではないのですが、やはり衝撃でした。
「簡便にできる」ということで広く使用されている「長谷川式スケール」ですが、正しい実施方法をあらためて伝えたいという著者意向により、長谷川先生実演DVD付きの解説書が出版されています。
認知症になった認知症専門医100の言葉
「認知症の第一人者が認知症になった」NHKスペシャルの放送が話題になりました。
☆上記リンクはYouTube上の同番組録画につながります。
「自分の姿を見せることで認知症とは何かを伝えたい」
長谷川和夫さんの現在の姿、支える精神保健福祉士である長女の南髙まりさん、奥さんの瑞子さんとの朗らかなやりとり、瑞子さんの奏でるピアノ。
ゆるやかに進行していく認知症とともにある日常が胸に迫ります。
『認知症でも心は豊かに生きているー認知症になった認知症専門医長谷川和夫100の言葉』は、認知症の当事者、家族、支援者にむけた「渾身のメッセージ」がまとめられた一冊。
序章 | 認知症研究の第一人者が認知症になってわかったこと |
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第1章 | 認知症を恐れるあなたへ |
第2章 | 身近な人が認知症になったら |
第3章 | 認知症介護に必要なパーソン・センタード・ケアとは? |
第4章 | 認知症700万人の時代を生きる心得 |
見開きに一言ずつ伝えたい言葉とその言葉に込められたメッセージ、そして解説が書かれています。
序章 認知症研究の第一人者が認知症になってわかったこと
8「今を生きる」
大事なのは今を生きること。今日ある今を生きることです。
認知症になると、時間の感覚がなくなってきます。物忘れが増え、その時その時の今だけを見ながら生きていくことになります。このような状態を悲観する人は多いと思います。しかし、悩み苦しんでも、かえって悪くなるばかり。今を大切にし、人とのつきあいを大切にしながら、楽しい気持ちで日々を過ごすことが大事ではないでしょうか。
その上で私が心がけるのは、明日やれることでも今日手をつけること。本を書きたいなら、序文を1行でもいいから書いてみる。手をつけると未来に足を延ばしたことになり、安心できるし楽しみも増えますよ。
つづいて、各章からの言葉です。
各言葉のもつ意味は、是非本書を手にとって読んでいただきたいです。
第1章 認知症を恐れるあなたへ
15「心は生きている」
認知症が進んでも心は豊にいきています。感性はむしろ研ぎ澄まされています。
第2章 身近な人が認知症になったら
40「過去を話すことと未来を語る可能性」
認知症の人が過去を話す際は、たんに過去を回想しているだけでなく、今につながる現実的な物語を語っています。そしてそれは未来を語る可能性すら秘めています。
第3章 認知症介護に必要なパーソン・センタード・ケアとは?
67「「doing」ではなく「being」」
何ができるかではなく、存在すること。つまり「doing」ではなく「being」を感じて、一緒に歩み、喜び、学ぶ。これがパーソン・センタード・ケアの姿勢です。
第4章 認知症700万人の時代を生きる心得
97「2.5人称」
医療職や介護職は、ある時は、認知症の人の心の中に寄り添って、またある時は専門的な観点から認知症の方本人やその家族とは距離をとるといった、「2.5人称」的な対応が必要なのです。
【人生100年時代】自分が家族が「認知症」になったら
「心は生きている」「今を生きる」を大切にー読後感想ー
「今を生きることの大切さ」をあらためて実感したというのが一番の感想です。
自分の大事を伝え・家族の大事を知っておくこと
自分は何が好きで何に喜びを感じているか、何を大切に暮らして来たか、自分の価値観、人生感、生活歴を、一番近くで共に暮らす家族にちゃんと伝えておこうと思いました。
同じように、両親、夫の価値観、人生感、何が好きで、何に喜びを感じ、何を誇りに暮らして来たかをもっと知っておきたいと思いました。
唯一無二の人生が昨日からの続きでそこにあること
そして、作業療法士としての姿勢をあらためて見直しました。
これまで「認知症」を患われた方に数多く出会ってきました。
長谷川式スケールを、何度も実施させていただきました。
どこかで、「あちら側の人」としていなかったか?
誰一人同じ人はいない。
唯一無二の尊い人生がそこにあります。
昨日から続く今に生きておられることを忘れずに、さりげなくそばにいられる人でありたいと思います。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました☆