OTノート

【作業療法】学び直しノート『作業療法の世界』から

なんちき
なんちき
「作業療法」学び直し!
おすすめの書籍紹介していきます♪

22年間(正確には産休・育休で10か月休職してます^^)作業療法士として、主に地域・老年期といわれる分野で勤めてきました。

1月末を最終出勤として2か所目の職場を退職。その後、意図せず「コロナ禍」となり現在に至っております。

せっかくの「お暇時間」を活かして、「作業療法士」という仕事を知りたい!学びたい!とブログに立ち寄ってくれた方におすすめの書籍を中心に「OTノート」としてまとめていくことにしました。

まずは、作業療法の歴史と理論、臨床家としての態度を学ぶ原点の書✨

「作業療法の世界 作業療法を知りたい・考えたい人のために」から!

【作業療法の世界】作業療法を知り・考える対話の書

はじめに(初版の序)より
 この本は作業療法概論として書かれたものである。だが四角四面のタイトルを避けたくて、標題は「作業療法の世界ー作業療法を知りたい・考えたい人のために」となった。
 うまくできたかどうかは別として、私が書きたかったのは、作業療法の精神、作業療法のイメージ、作業療法の感触である。人間のコミュニケーションは言葉にたよらなければならないが、しかし本当に伝えたいことは言葉を超えたところにあるといつも思う。
・・・人間は講義を聞かされるよりは自分のテンポで読むことのほうを好むし、他者との対話を重ねる中で触発され、成長するのだとつくづく思ったものである。「いつか作業療法とは何かっていう本を書きたいんです」と言って卒業していった学生があったのを忘れない。

 読むときにも、ひとは心のうちでたくさんの対話をするものだと思う。実は書くこともまた対話であった。本書のところどころに挿入した私自身の見解は、私から読者に向けて発した問いかけであるいつかあなた自身が書くであろう作業療法概論のために、本書が予備的な対話の相手を務めることになれば嬉しい。

✔作業療法についての「対話の書」

著者・鎌倉矩子氏(1939年ー)は、日本の作業療法を黎明期から牽引してこられた臨床家かつ、教育者として多くの作業療法士を育ててこられた日本の全作業療法士のメンター✨

「作業療法はおもしろい あるパイオニアOTのオリジナルな半生」として、歩んでこられた軌跡が2012年3月に書籍化されている稀有な方です。

「作業療法の世界」は、作業療法士教育課程の必修る専門科目、「作業療法概論」の教科書として2001年に初版が出版されています。

 

出版時には臨床に出ていた筆者が本書に出会ったのは、もう少し先の話・・・

 

本書は、作業療法士が現場で対象者に向き合う中で「作業療法とは何か」に悩み、自分に問いかけた時にあらためて読むことで、その真価が発揮される「対話の書」なのです。

<重視された3つの論点>
1.歴史をきちんと書くこと
2.作業療法の事例を通した等身大の描写(≠技術紹介)
3.現代作業療法モデル論の提示

以上を踏まえて、作業療法士として心にとめておきたい点について、歴史を中心に復習していきます!

【作業療法の歴史】生い立ちとわが国における発展

1章:作業療法の生い立ち から

 

【古代養生法としての「作業」】

 

✔アリストテレス
「幸福は活動それ自体の中にある」

 

✔ガレヌス

「仕事は天然の医師なり」

哲学者の言葉から、「作業」は養生法として、文明のはじまりとともにあったのです。

 

そこから「療法」を名のることとなる、作業療法の源流は、18・19世紀の道徳療法にその起源があったとされています。

 

【作業療法の源流ー道徳療法】

 

<道徳療法の創始者>

●フィリップ・ピネル(1745~1826)/フランス革命を生きた精神科医

精神病者に作業をさせることの中に、心身の健康を育むものとしての価値、観念の悪しき連鎖を断ち切る機会としての価値、本来あるべき生活の予行練習をする機会としての価値を見出していた。

道徳療法は、南北戦争後の社会経済的疲弊と科学的厳正さとのはざまで衰退してしまいます。

 

【アーツアンドクラフツ運動】

 

一度衰退した「作業」は20世紀初頭(1895年~1920年)に、アーツアンドクラフツ運動=社会変革運動として息を吹き返したのです。

アーツアンドクラフト運動

●医師や看護師という医療関係者だけではなく、建築家、ソーシャルワーカー、美術工芸教師なども団結し発展していった点が特徴。

●手工芸や音楽、ダンスなどの作業を企画し、病者や社会的弱者の社会化、治療、教育の場として、手工芸や音楽、ダンスなどの作業を企画し、治療として役立てられた。

●仕上がりの完成度よりも制作過程を大切にする考えかたが生き残り、作業治療(occupation cure)、仕事治療(work cure)と呼ばれるようになっていった。

 

【作業療法の創始者たち】

 

1917年 全国作業療法推進協会(National Society for the Promotion of Occupaitional Therapy:通称NSPOT)が6名の創始者により結成されました。

米国作業療法の誕生です!

 

NSPOT設立メンバーの一人は医療従事者ではなく「当事者」だった

●ジョージ・バートン/建築家

1901年に結核にかかり建築家としての仕事を断念。さらに左足の切断、ヒステリー性の左片麻痺に罹患。療養地で、彼の回復を助けたのが「素朴な大工仕事や園芸という手仕事」だった。

余生を病者と障害者の援助に捧げる決心をして1914年に「慰めの家」を設立。

看護学校の聴講など独学で医学知識の吸収に努め、作業が病からの回復を早めること、また作業が人間をつくることを知っていく。

 

【米国における作業療法の成立】

 

✔作業療法の価値を社会に認めさせるきっかけになった

 

✔作業療法は社会奉仕ではなく職業になった

 

✔2つの世界大戦を経て、医療職としての立場を鮮明にすることになった

 

職業リハビリテーションと作業療法

●作業は"楽しい気晴らし”の手工芸ではなく、職業的なものへとシフト

例)速記、簡易木工、製図、タイプ、電信、事務作業など

●リハビリテーション医の登場

●独立科学へと専門分化、研究が促進されていった

 

第2章 わが国における作業療法の発展 から
 わが国に、いわば国策として近代作業療法が移入されたのは1960年代のことである。それは主として米国からの移入であった。しかしそれ以前にも、作業療法の前史というべき長い歩みがあった。

 だが、はっきりと作業療法を名乗るものは、いつでも海の向こうからやってきた。1900年前後(明治時代)以降に展開された精神科作業療法、1920年代(大正時代)から提唱され、1940年代に入ってようやく実現をみた肢体不自由児療養訓練、1930年代から実施された結核作業療法、これらはいずれも海外事情を知る機会のあった医師たちが作業療法を知り、その効用を心から信じて、実践へとひた走った結果である。それらの展開はその人、その周辺にとどまっていたが、長い歴史を刻み、1960年代の新たな作業療法を受け入れる土壌となった。

 

なんちき
なんちき
日本の作業療法黎明期から2000年まで、史実が丁寧に記録されています。

「作業療法士」の誕生

●1965(昭和40)年5月「理学療法士及び作業療法士訪」成立

●1966(昭和41)年3月最初の国家試験開始ー22名の作業療法士が誕生、日本作業療法士協会結成

●1974(昭和49)年、社会保険診療報酬点数表に「身体障害作業療法」「精神科作業療法」「精神科デイケア」が登場

●1982(昭和57)年 老人保健法制定 老人保健施設、老人デイケア誕生

高齢社会の到来に備え、養成校・定員数の大幅増加。1992年には大学課程が実現。1981年にようやく1,000名を超えた有資格者は、1999年には12627名になる。

☆2020年4月現在:99,800名!!

【作業療法の実践】事例から学ぶ「作業」の意味

なんちき
なんちき
序章に登場する中学校教員Yさんをはじめ、各分野から12名と作曲家大江光氏誕生の物語を通して「作業療法」を体感できる!

✔今、本書を手に取る意義

歴史の振り返りと共に、精神、発達、老年期という各分野におけるパイオニア作業療法士と対象者の織り成す「作業療法」物語を追体験できるところにあります!
 
✔作業療法における「作業」とは・・・

 作業療法における作業は、治療の手段とみなされるだけでなく、場合によっては獲得すべき技能の目標であり、よりよい人生の時間そのものともなる。作業療法を担当するセラピストの役割も、これらに応じて、治療的性格、教育者的性格、共生者(パートナー)的性格を帯びる。作業療法が扱う作業は、ヒトが生きて行う目的活動の全て・・・。
 

 

【作業療法の理論】創始者の思想から作業行動モデル論へ

☆京都・哲学の道

 

✔作業療法の父:ダントンの言葉

 

ダントン
ダントン
人間にとって作業は水や食物と同じように必要なものである。
✔米国の作業療法士 メアリ・ライリー

 

ひとは心と意思に賦活されて両手を使うとき、それによって自身を健康にすることができる

 

ライリーは作業療法の独自性を問い、作業行動理論を展開していきます。
「作業行動パラダイム」と呼ばれ、日本でも「作業に焦点をあてた実践」を展開していく気運が高まりを見せていくことになります。

 

筆者の新人時代は、「医学モデル」から「生活モデル」へという作業療法を取り巻く潮流を耳にしつつも、分野別、疾患別の技術論を中心に学び、それぞれに巣立っていった頃でした。

 

臨床に出てからは、理学療法士が基本動作、作業療法士が応用動作のリハビリテーションを担うならば、基本を知らなければ、作業療法はできないという思いで、手技の習得にとらわれ、研修会に行く日々。

 

転職先で作業療法室を新人と2名で開設、疾患別リハの時代となり、療養型から回復期リハ病棟への転換を経験しました。

 

そこで、40代で脳梗塞を発症された主婦・Aさんと出会います。

 

作業療法士として何をなすべきかに悩む中で、本書を手にとったのでした。

 

臨床における思考のみちすじ
クリニカル・リーズニング(clinical reasoning)とは、臨床家が患者/クライエントへの働きかけを計画し、方向を決め、実行し、結果を反すうする際にたおどる思考のみちすじ(=思考の過程)のことである(Schell,1998)。
・・・一瞬一瞬に、こうだからああしよう、ああだからこうしようと考える、その決断過程のことである。
 実際のところ、臨床家たちは、疾患・障害に対する知識や評価・介入の実践理論だけにしたがって臨床活動を進めているいるのではない、その場、その時、その人をめぐるさまざまな状況を読み取り、決断しながら仕事を進めているのである。

4つのクリニカル・リーズニング

●科学的リーズニング

●物語的(ナラティヴ)リーズニング

●実用的リーズニング

●倫理的リーズニング

著者は、これまでの作業療法教育が主として、科学的リーズニングと倫理的リーズニングを扱ってきたこと。

 

一方で、現場では物語的リーズニングが確かに根付いていながらも、長い間「非科学的なもの」とみなされ、研究の主題になってこなかったことを指摘。

 

あらためて、語りの積極的利用が試みはじめられていることに注目しています。

 

セラピストの態度と対象者の表面的ニーズは合わせ鏡

 

片麻痺の後遺症がはっきりと予測されたAさんに対し、機能回復を志向する「科学的リーズニング」中心の関わりとなっていました。

 

Aさんから聞かれる作業療法ニーズは「左手が動くようになってほしい」でした。

 

大切なことは、左手が動くようになって「何をしたいか」ということ。

 

もっとAさんの物語を聞く必要があるのではないか?

 

4人の子供を育てながら、義母の介護を担ってこられていたAさん。

 

Aさんが本当にしたい作業は何?

 

もっと、Aさんの物語をAさんの言葉で聴きたい!

 

本書をきっかけに気づき、Aさんの思いを言葉にできるよう、関わり方を見直していったことを思い返しています。

【作業療法】よりよい作業的存在の支援を目指して

 

日本の作業療法現代史については、鎌倉矩子氏がインタビュアーを務められた「作業療法を創る」を読むことで、法制化から50年の臨床を追体験することができておすすめです。

 

次世代の作業療法士への熱いメッセージ

また、鎌倉氏の願いをかなえるように、新しい作業療法の世界「作業療法について話そう」が2019年に出版されました。

これからの作業療法士必携の書です!

 

今も色あせることのない著者メッセージを最後に引用して、第一回目のノートを結びたいと思います。

 

終章 よりよい作業的存在の支援をめざして

私は作業療法が”当たり前”を扱う職業であることを受け入れた。これも若いときには専門家らしさの欠如とみていた側面である。だが障害者とは”当たり前”を奪われた人あるいは奪われかかっている人のことである。

 リハビリテーションはその”当たり前”を取り戻す仕事なのだ。

 考えてみれば、”当たり前”を取り戻すとは、人権思想にほかならない。これが大切でなくて何だろう。”当たり前”には人の願いが詰まっている。実現するにはたくさんの切り口が要る。それを追究することが作業療法のおもしろさなのだ。

 

なんちき
なんちき
作業療法はおもしろい! 

 
最後まで読んでくださり、ありがとうございました☆