人間関係で一番大事なことは、「人の話を聴くこと」です。
医療・福祉「ケア」の現場において「傾聴」は、あたりまえの基本技術
…のはずですが…
まずは「傾聴」と頭ではわかっている。
だからこそ、案外と陥りがちな落とし穴があるのではないか?
最近いただいた利用者さんからの「クレーム」の振り返りから、あらためて【聴く技術】の学び直しにと手に取った書籍『やっぱり、それでいい。』をご紹介します!
【やっぱり、それでいい。】癒しに変わる『聴く技術』
人間関係で一番大切なことは「人の話を聴くこと」
【やっぱり、それでいい。】は、前作【それでいい。自分を認めてラクになる対人関係入門】の続編です。
作者である漫画家:細川貂々(ほそかわてんてん)さんの実体験に基づき描かれるマンガに精神科医:水島広子先生のコラムによる合作です。
実体験がマンガで描かれていることに、対人関係療法というエビデンスの確立された精神療法のプロである水島先生のコラムが加わることで、やさしく理解がすすむ構成になっています。
実場面を想像しながら自分に引き寄せ学ぶことができ、何より貂々さんのマンガがほっこり温かい(^^)
一番大事なのは、人の話を聴くこと
ー治療においては、専門的助言を与える必要があります。でも、それは相手の話をよく聞いて、今のこの人にとってムリなくできる一番のポイントは何か、ということを見極めて初めてできることです。
よく、精神科や心療内科を受診したのに、「そんなのわかっている!」という助言しかもらえなかったり、話をよく聴かずに「まとめ」をされてしまったり、最悪の場合「治ろうとしないあなたが悪い」と言われてしまったりする人がいる、という話を聞きます。これはまさに「聴くこと」不足、ということでしょうね。【やっぱり、それでいい。】より
専門職の陥りやすい落とし穴がここにあります。
何か「アドバイス」をしなければいけないと無意識に行動していないでしょうか。
みんな「人の話は聴いている」と言うけれど
絶対に人の話より「それに伴う自分の思考」の方をたくさん聞いている
【やっぱり、それでいい。】より
最近、利用者さんからいただいた「クレーム」は…
「かぶせて話してくるので、最後まで聞いてもらえない」というものでした。
知らず知らず、「何か気の利いた返事をしなければいけない」と自分の思考の方をたくさん聞いていた私が、最後まで利用者さんの言葉を聞くことができずに「かぶせて話してしまっていた」ようなのです。
「かぶせてる」つもりは全くなかったのですが…
自分がどう感じたかではなく、利用者さんが「かぶせてくる」「最後まで聞いてもらえない」と感じたことこそが事実。
深堀りして聞き進めてよいものか、迷いや怖れが、あったこと=自分の思考でいっぱいだったことも最後まで聞けなかった原因だと振り返っています。
人の話を聴く時は相手の現在に集中する
相手の現在に集中する
人の話をきくときには、多くの人の頭の中を「相手になんて言ってあげたらいいんだろう」とか、「また、この話?」など、いろいろな思考がよぎるものです。
つまり、相手の話「だけ」を聴いているわけではないのですね。むしろ、相手の話に触発された、自分自身の思考を聞いている、と言えます。これは、相手の話を聴く上では、実は「雑音」なのです。
「雑音」の方が大抵の場合大きいので、アドバイスするポイントを見つけたり、我慢して話を聴いたり、と頭は疲れてしまいます。すぐにアドバイスする聞き方をされるよりも、じっくり聴いてもらって、そのうえで自分の話に関心を持ってもらえる方がずっと満たされるのです。
相手の現在に集中するコツは、大きく言えば二つです。一つは、先ほど話したように、思考が浮かんで来たらそれを「脇に置く」のを何度も繰り返すことです。相手の話よりも、相手の現在を聴くという感じです。
もう一つは、相手の話を「問題」としてとらえて解決しようとしないこと。人間は、安心できる環境を与えられると、自ら前進していくのです。【やっぱり、それでいい。】より
「無条件の肯定的関心」
本書の中では、てんてんさんが「話の聴き方ワークショップ」に参加する場面を通して、「脇に置く」をわかりやすくマンガで伝えてくれています。
自分も相手も温める「ポカポカとした心」で聴く
こころの姿勢は2つしかない
「あたたかいこころ」か「こわがってるこころ」か
知らないうちに過去や未来に縛られている
昔(すぎちゃったこと)やこの先(まだ起きてないこと)は今と関係ない
ネガティブな気持ちは自分にキケンを知らせてくれるから大事だけど
長時間一緒にいるほど仲良くしなくていい
怒りは困っているというキケン信号
自分が怒ってしまった時は「あ、私、今困っているんだ」って思う、そうすると余裕が出てくる。
怒っている人を見た時「この人は困ってるんだな」と思うと相手の怒りに引っ張られなくて済む。
人は穏やかでひなたぼっこしながらポカポカしているか
怖がって日蔭でイライラしながら震えているか
そのどちらかだと思えば楽です。
【やっぱり、それでいい。】より
本書では、様々なシチュエーションでの「聴き方」の具体例がマンガでわかりやすく紹介されています。
こころの姿勢には「ポカポカ」か「イライラ」の2つしかない。
ならば、ポカポカとした心で向き合おう。
利用者さんが自ら前にすすめるように【聴くこと】ができたなら、それはきっとお互いにとって幸せなことです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました☆