2020年6月から都道府県主催の介護支援専門員・再研修(取得後実務未経験、未更新の資格保持者対象研修)に参加中です。
全10日間の日程で行われる再研修。
3日目からは全体を2つにわけ、5~6人の小グループに分かれての模擬ケアプラン作成研修がはじまりました。
前回記事でもお伝えしましたが、今年度の研修に限っては、全員が教科書に掲載されている一事例をもとに、それぞれの地元(または勤務先地域)社会資源の情報収集とそれを踏まえたケアプランを研修成果物として7日目までに提出することになっています。
本記事は、研修3日目で学んだ、研修の定番=課題整理総括表を通して考えた事の記録です。
「課題整理総括表」が導入されたきっかけは?
利用者と家族の生活課題解決=「自立支援」?
ケアマネ思考過程の言語化ツール『課題整理総括表』と、ケアマネジメントとケアプラン作成について考えたことをお伝えしていきたいと思います!
【ケアマネジメント】の目標は「自立した」日常生活
A4判で辞書なみの厚さの上下テキストを持参し研修参加中(^^;)
介護保険根幹「自立支援」と現実の構造的矛盾
介護保険法 (目的)
第1条 この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等ついて、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保険医療サービスおよび福祉サービスにかかる給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。
あらためて見直してみると、介護保険法の一番最初に「自立支援」が掲げられていることがわかります。
しかし、現実に進行したことは・・・
✔措置から契約へ(利用者本位)
✔介護の社会化=市場化
表向きのうたい文句とは裏腹に現場は動いてきたというのが、介護保険前夜に就職し、介護保険下で働いてきた筆者の実感です。
介護保険のもたらした転換は、その制度の背景に超高齢化・少子化社会の中で、高騰しつづける医療費削減があったことはまちがいないのですが、先の法文にもあるように、その「制度設計」は「動きながら考えていこう」というもの。
根本的な構造的矛盾をはらんでいました。
介護保険の構造的矛盾
●介護度別に定められたサービス利用料
●市場化により「選ばれる良いサービス」=「利用者の御用聞き」になる危険
介護度別のサービス利用料
制度開始当初は要介護1~5の5段階、現在は要支援1・2と要介護1~5の7段階に分かれており、介護度に応じた点数=金額が配分されています。
介護度が高いほど使えるサービスが多い=事業者側からすると報酬単価が高くなるという仕組みです。
適切に自立を支援し介護度が軽くなると、利用者からとってみれば今まで通りのサービスが利用できなくなり、事業者側にすれば報酬が下がる(収益減となる)しくみです。
公共福祉要素の強い介護事業であっても、慈善事業ではないため、収益減で赤字が続くと倒産することになります。
「選ばれるサービス=良いサービス」の危険
利用者本位、契約に基づくサービス提供をうたう介護保険サービスでは、利用者はお客様、サービス事業所側は「選ばれてなんぼ」となってしまいます。
利用者が望むサービスを提供していくれる事業所が良い事業所、良いサービスとなり、必要なサービス以上に、利用者が満足するサービスを紹介してくれるケアマネが良いケアマネということになります。
「使わな損」精神で介護保険申請、認定率トップを誇る自治体は比例して、徴収される保険料も高騰していきました。
●要介護認定率:男女とも全国一位→大阪府
●介護保険料(65歳以上):大阪市7,927円(全国平均5,869円)
「自立支援型ケアプランを!」やり玉にあがったケアマネ
2025年問題
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、認知症高齢者は675万人を数えることが予測されている2025年を前に、介護保険サービスの案内役ともいえる介護支援専門員に先んじて矛先が向けられました。
【介護支援専門員の資質向上と今後のあり方に関する検討会(2012年)】
✔アセスメント(課題把握)が不十分
✔サービス担当者会議における多職種協働が十分に機能していない
✔ケアマネジメントにおけるモニタリング、評価が不十分(短期目標が曖昧である事例が多い)
以上を踏まえて、2014年6月26日厚労省老健局より示されたのが、課題整理総括表と評価表でした。
従来から書類業務過多が指摘されていたことを踏まえて、法令上の義務化は免れましたが、介護支援専門員法定研修では必ず使用されることになりました。
「自立支援」に資するべきはリハビリ専門職
続く2015年度(平成27年度)介護報酬改定は、リハビリ専門職にとって、決定的な変化を求める改定になりました。
これまでの介護保険下でのリハビリテーションは「心身機能」へのアプローチに偏っていたのではないか?という調査結果に基づく厳しい指摘。
心身機能から活動と参加に資するリハビリテーション支援のために、報酬体系が大きく見直されました。
●個別リハ加算の基本報酬への包括化
●リハビリテーションマネジメント加算の強化
●生活機能向上連携加算の強化(他サービスへのリハビリ専門職の活用)
通所リハビリテーションと通所介護の機能分化
通所リハビリテーションは医師の関わりの明確化と共に、リハビリマネジメントを通した生活課題の解決、目標達成による「卒業」支援=循環型への移行が問われることになりました。
同時に、平成30年までに全国全ての自治体に地域ケア会議の設置が義務づけられます。
筆者の住む地域では昨年やっと、地域包括主体での地域ケア会議の開催がはじまり、いくつかの模擬ケア会議、勉強会に参加してきました。
共通言語は「自立支援」
…なのですが、ケアマネさんとの勉強会に参加してみると、必ずしも「共通言語」にはなっていないと感じることも多く、何をもって「自立」とするのか?
サービスの活用によってはじめて生活の継続性が保障されている利用者に安易に「卒業」をつきつけることができるのか?等々・・・
結局は、「財政難始まりの構造的矛盾」は否めず、利用終了が経営悪化につながる側面、ケアマネと同じく加算に伴う書類業務の増大に頭を悩ませる日々を送ることになったのでした。
「課題整理総括表」はリハビリ目線
「できる」ではな実際に「している」日常生活動作、日常生活関連動作のアセスメントと予後予測、利用者・家族の実現したい暮らしと解決すべき生活課題の抽出・・・
各項目、構成はリハビリテーション計画書と重なる部分が多く、「課題整理総括表」はリハビリテーション目線で作成されている!というのが第一印象でした。
ならば…すらすらサクサク書けますか?
否!(>_<)
やはり、利用者さんの生活背景、現状と意向を、興味をもって知ることがなければ、言葉は出てきません。
※模擬ケアプランは実在の人物でない紙面上の存在である点が、実は難しい⁉
膨大な書類業務の負担を考えると、リハビリサービスに求める内容が、「転倒予防」「下肢筋力強化」「歩行練習」という「テンプレ」になるのもやむ得なかったかも?
「思考過程の言語化」は訓練の側面あり!
簡潔に!されど心を込めて!言語化できるよう向き合っていきたいと思います🔥
まとめ*ケアプラン作成研修「コロナ禍」の事情
2日目までの全体講義は、長机に一人の座席、徹底した感染拡大防止策が取られ、参加者自身の発言機会はないままで過ごしました。
3日目からのケアプラン作成実習は小グループ。ついに研修の定番「グループディスカッション」が解禁となるのかと思いきや…コロナ禍特有の下記方法がとられました。
✔あくまでも個人ワーク
✔準備されたフェイスシールドまたはマスク着用
✔ワーク内容を共有するためグループ内で順に発表し質疑は原則行わない
座席間隔は一席ずつ空いた配置のため微妙な距離感があり、フェイスシールドは声が通らないため、マスク着用での発表が中心になりました。
せっかくのご縁、ディスカッションはかないませんが、できるだけ有意義な時間を共有できるよう、残りの研修に前向きに参加していきたいと思います。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました☆
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