作業療法って何?
作業療法士ってどんな仕事?
作業療法に興味を持たれた方に、おすすめの一冊であると同時に、仕事に悩み、その魅力をもう一度見つめ直したい作業療法士にも読んでもらいたい一冊。
葉山靖明氏『だから、作業療法が大好きです!』を紹介します!
【作業療法】当事者が伝える魅力に真理あり
著者:葉山靖明氏
[略歴 本書より抜粋]
1965年 福岡兼豊前市に生まれる
20代に南米、中近東を一人旅し、その後、会計学講師
2006年 会議中に左脳内出血発症。病院におけるリハビリの中で感動的な作業療法を体験する。
2007年 株式会社ケアプラネッツ設立
2008年 「デイサービスけやき通り 宗像」開設
2011年 社会福祉法人夢のみずうみ村,理事
2012年 「デイサービスけやき通り 古賀」開設
全国での”作業療法を伝える”講演および執筆活動を継続中
福岡兼宗像氏在住。妻と3人の子どもと暮らす
好きなことは、旅、ニール・ヤングの音楽、作業療法
身体障碍者手帳 2級
片麻痺当事者としてデイサービスを開設
著者・葉山さんは2006年脳卒中発症後、回復期リハビリ病院での作業療法と作業療法士との出会いによって「第二の人生が始まった!」と実感。
作業療法の感動を伝えたい思いで、作業療法を実践するためのデイサービスを設立されます。
~まえがき~より
「デイサービスけやき通りでの、作業療法の感動を伝えたい!」
「Enabling occupation(作業の可能化)のすごさを伝えたい!」
これが、この本の目的である。まったくの素人である私が感じた作業療法のさりげない愛情の深さも伝えたい。① My Meaningful Occupation より
1 感謝と挨拶
2008年(平成20年)の夏。
私は今と同じデスクに向かっていた。
『作業療法ジャーナル』で連載していた「リカバリーショット」の原稿を書くためである。2008年10月号から4回続いた私の闘病記(脳内出血)は多くの方に読んでいただき、多くの励ましの言葉をいただいた。
パソコンを使い左手だけで「原稿を書く」という作業、それは生産的活動として、私の存在(presence)や、社会的役割を高めてくれた。心より感謝したい。
しかし今、私のことなどご存じでない方も多いはず。
私は作業療法士ではなく、”OTファン”であり、片麻痺男であり、デイサービス経営者。旅とロックミュージックと作業療法がこの上なく好きな男である。
作業療法「意味ある作業」を支援するデイサービス
本書の中心は、けやき通りデーサービスに通所する対象者それぞれ固有の「意味のある作業」に焦点をあて、「生きる力」を取り戻す過程の記録です。
表情豊かな対象者の作業風景と「生の言葉」が、そして支援者の担当作業療法士の言葉とともに紹介されています。
門松づくりは「意味のある作業」
野菜づくりと「ストレスマネジメント作業療法」
パソコンリハビリと「生きる力との関係」
等々…それぞれの作業と作業療法を取り巻く大切なキーワードが事例を通して語られます。
また、当事者の主体的性をベースに運営されているけやき通りデイサービスでは珍しい、デイサービス側が提供するコーナーが「昭和の学校」です。
元講師の筆者が「語り教える作業」が片麻痺でもできる!失語症が瞬間的に治るのを感じる時間だと語った後、読者に次のように問いかけます。
5 懐かしの「昭和の学校」コーナーより
利用者の方が、活躍されてきた”昭和”という時代と当時の作業を思い出すことで、現在の活き活きとした作業につながっていると感じる。ある方は、「こりゃ脳トレになるね、家に帰ってからいろいろと思い出すね」と言って連絡帳にいろいろな思い出を書いてくださる。昭和の学校の二次的効果、三次的効果も出てきた。
認知症の方も、このコーナーだけは、覚えていてくれており、朝の送迎時から「今日の昭和の学校は何⁉」とハリのある声で胸を膨らませる。
さて、読者の皆さん、これらの取り組みは「作業療法」といえるだろうか。「作業」によって元気になったのだから、作業療法と私は思っているのだが…
「作業療法の世界」でも語られていた、あたりまえを扱う作業療法の普遍性。
”意味のある作業”を希求し日常を取り戻す行為=作業療法としたとき
誰もが「作業療法」を作業療法と意識することなく自然に展開されている場面に出会うことがあります。
そこにはもちろん「先生」と呼ばれるような専門家は必要ない。
それならば作業療法士が存在する意味はどこにある?
作業療法士が必ずぶつかる問いがそこにあります。
本書は、片麻痺当事者である筆者が「作業療法」の魅力に気づき、「作業療法」を活き活きと展開する場を創ることを通して、作業療法の普遍性を語ります。
同時に、作業療法士の存在、その「さりげなさとやさしさ」へのリスペクトを繰り返し伝えてくれています。
作業療法の源流”George Edward Barton氏”の精神性
著者は自身が体験した作業療法の歴史、約100年前の源流にたどり着きます。
なぜ、いまBarton氏か? より
私は2006年(平成18年)に、片麻痺の自分の身体で作業療法というものを体験した。2年経過して、私は理論を探し始めた。さらに2年が経過した。
みつかったのは、100年前の書籍の中からだった。とてもホリスティックであった。
その著者はoccupational therapistという職業の名づけ親であり、元設計士であり、1917年(大正6年)に米国作業療法推進全国協議会の初代会長に就任したGeorge Edward Barton氏であった。
彼は自分自身の片麻痺等の障害経験から、作業療法の驚くべき効果、高い必要性を知り、自ら42歳で「癒しの家」をつくり、作業療法の実践と研究と普及に努めた方である。つまり、人類の幸福のために動き出した人物である、多くのけが人や病人の心を活き活きとした状態にし、障害を「人生の再出発点」にするための作業療法をつくったBarton氏。・・・中略・・・
Barton氏の偉業を私が作業療法士に伝える。それが社会に説法であることは、十二分に承知している。しかし、承知のうえで伝えなければならないときもある。・・・その「作業を使う療法」は医学的治療方法ではあるが、その療法の土台に「心」が必要であり、そこには「人生」を眺める大きな視点があるのではないだろうか。逆にこの「心の土台」と「人生の視点」のない作業療法など、私は考えたくもないし、私にとっては考えることすら意味がない。
・・・中略・・・
作業療法士の歴史の中でのこのBarton氏の存在、特にその精神性はすべての作業療法士が知っておくべきだろう。
作業療法士なら誰もが潜在的に”Barton氏の精神性”を持っているはずであると著者は信じて語りかけてくれます。
【作業療法】の普遍性~未来の作業療法士へ~
あたりまえの日常をあつかう”作業療法の普遍性”に対して、常に、自身の専門職としての存在意義は何かと問い続けてきた典型的な「迷える作業療法士」です(^^;
ベテランの看護師さん、介護士さんがごく自然にされている支援が、地域の現場にはありました。
「先生はリハビリして」と言われ、何か特別なことをしなければならないという焦り。
制度上の「20分個別リハビリ」という役割の中で、理学療法士となんらかわらない、”ベッドに横になっていただいて運動療法後に歩行練習”というような、典型的な「わかりやすいリハビリ」を要求されるジレンマ。
そんな中、2015年に行われた介護報酬改定は、心身機能に偏りすぎたリハビリテーションの在り方を問い、「活動と参加に資する」リハビリテーションを実践せよ!と行われた改定でした。
地域の場では少数派の作業療法士として、今こそ「意味ある作業」を支援する作業療法を実践することが求められている。
焦りと同時に、もう一度原点に立ち返りたいと手に取ったのが本書でした。
あらためて本書を手にとり「なんちきが思う作業療法士」とは・・・
<作業療法士とは>
✔普遍性の中にある作業の力を当事者と共に見つけることができる専門職が作業療法士である。
✔常にその人らしく「よりよくあること」を「心」と「人生」を土台にすることを忘れずに探しあて、言葉にすること、さりげなく寄り添い支援できる専門職が作業療法士である。
本書の最後には、「未来の作業療法士へ」として作業療法学生さんむけに、著者・葉山さんの熱いメッセージが綴られています。
「情」や「人徳」のみではなく、作業療法士が「職業」「専門職」としてあるならば、人類にとってこんなに尊いことはないと伝えてくれる著者の言葉が、一人でも多くの作業療法士を目指す方に届くことを願います。
作業療法の普遍性は、健康に暮らしたいと願う全ての人、暮らしの中に役に立つ!
健康を願う全ての方におすすめの作業療法の魅力を学べる最適の一冊です!
対象者から作業療法の魅力を学ぶ「続きの一冊」はコレ!
「12人のクライエントが教えてくれる作業療法をするうえで大切なこと」/齋藤佑樹 著
最後まで読んでくださり、ありがとうございました☆