2020年は世界的パンデミック、誰もが想像もしていなかった一年になりました。
日々、見聞きする悲しいニュースに心はとらわれ、ショックを受けています。
今回は、未知のウイルスへの恐怖、大切な人を失う悲しみ、同調圧力の息苦しさ、未来への「漠然とした不安」にとらわれてしまった時に読んでほしい本の紹介です。
『どうせ死ぬのになぜ生きるのか』です。
身近なのに、知らないことの多い『仏教』の教えが、生き方のヒントになる。
2500年の時を超えて伝わる仏教の知恵、「行」「瞑想」「方便」といった実践的な生き方ヒント集、「仏教心理学」入門書です。
【この記事の内容】
▶「どうせ死ぬのになぜ生きるのか」という問いへの回答とは?
▶仏教の知恵「行」「瞑想」「方便」の習慣で心を整える方法
▶プラスα「問い」にまつわるおすすめの本
『どうせ死ぬのになぜ生きるのか』という問いへの回答
著者:精神科医・名越康文さん
著者:名越康文氏 1960年奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、高野山大学客員教授。専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現・大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』、『毎日トクしている人の秘密』、『驚く力』など。(本書より引用)
上記紹介以外では、『自分を支える心の技法』は、怒りとの向き合い方に着目した著書。
遅読のすすめ『良質読書』は、以前、当ブログで紹介させていただきました。
日本テレビ日曜朝の情報番組「シューイチ」のコメンテーターとして「知ってる」という方も多いのではないかと思います。
テレビでよく見る精神科医、臨床よりタレント業優先の方なのかな?なんて見方をしていたのですが…
コロナ禍の自粛期間に、精神医学、アドラー心理学、仏教をベースとした「様々な不安との向き合い方」をYouTube発信されていることを知ってから、名越さんのお話、人柄に引き込まれていきました。
☆YouTube「名越康文TVシークレットトーク」!
☆ライブドアYouTube番組【ゲームさんぽ】コラボ動画もおもしろい!
根源的な問いに答える『仏教』
ーなぜ、悩みや不安は尽きないのか
どんな人でも、人生の中で悩み、不安を覚えながら生きています。
「友人ができない」「仕事がおもしろくない」「今の貯金では老後が心配だ」…。
人によってその中身は千差万別であったとしても、常に何かに悩み、将来に不安を覚え、憂鬱で暗い気持ちに陥る日々を乗り越えながら人生を送っているという点では変わりありません。どれほど頭が良くても、どれほどお金持ちでも、どれほど容姿端麗であっても、おそらく「悩みや不安と無縁の人生」というのはないでしょう。・・・環境面でも、社会面でも、これほど恵まれた国はないかもしれません。しかし、それにもかかわらず、僕ら一人ひとりの心の中には暗く、澱んだ「漠然とした不安」がある。
なぜ、これほど恵まれた生活を送っている僕らの心の中に、不安があるのか。それは、僕らがある一つの問いに答えを出していないからです。
その問いとは、「どうせ死ぬのになぜ生きるのか」です。
人間は生まれや育ち、その後の出会いによってさまざまな人生を歩むことになります。
ただひとつ「やがて死ぬ」という運命だけは、例外なく共有している
男でも女でも、お金持ちでも貧乏でも、いずれは死ぬ
だとすると一人ひとりが日々苦労しながら過ごしているこの人生には、いったいどういう意味があるのでしょう?「やがて死ぬ」のに、大変な思いをしながらなぜ生きるのか?
・・・どうせ死ぬなら、一生懸命働いても、だらだらと怠けて、遊んで過ごしても同じではないでしょうか?勇気を振り絞っても、臆病なまま生きても、同じことではないでしょうか?あらゆるよろこびに、あらゆる悲しみに、あらゆる苦しみに意味がないとしたら。僕らが学び、働き、子供を産み、育てることの意味がないとしたら…。
僕はこれこそが、僕ら一人の例外もなく心の奥底に抱えている「漠然とした不安」の根源なのだと思います。「どうせ死ぬのになぜ生きるのか」という問いに答えられない限り、僕らは根本的なところで「生きる事の意味」を見出せない。だからこそ僕らはいくらお金を儲けても、いくら恋人や「家族に恵まれても、心の奥底にある「漠然とした不安」から逃れることができないのです。
精神科医である名越さんが、仏教を学ぶようになった動機こそ、この根源的問いに向き合っうため。
はじめて「いつか死ぬ」ということに向き合ったのは名越少年10歳の頃、医学部に入ってから、精神科の救急現場で…繰り返し、この「問い」は名越さんを追いかけてきたのでした。
ー仏教には「こうすればいいよ」という実践の指針がある
根源的問いへの答えは・・・
「必ず死ぬ」運命を抱変えて生きる一人の人間が、自分の人生をどう生きていくのかということについての具体的な指針を示してくれるものでなければならない。
仏教の「行」と「方便」ほど、具体的な指針を示してくれるものはない。
誰もがドキッとする「どうせ死ぬのになぜ生きるのか」という問いへの答えは、一人ひとりの生き方、実践の中にある。
その一つの具体的実践として、2500年の風雪を生き延びて伝わる『仏教』の知恵を借りようよ、というのが本書の趣旨なのです。
☆Amazonレビューには、問いへの答えがない!タイトルと内容が不一致!という批判が寄せられていますが…いわゆるハウツー本ではないということです。
本文の中で、名越さん自身が問いの答えを探している途中であると記述されていることにがっかりするコメントもあるのですが、個人的には的外れではないかと思います。
【仏教】の「行」「瞑想」「方便」を日常に取り入れる
心は瞬間ごとに変化し続けている
ー三分間、自分の心を見つめてみる
たった三分間の間に、頭の中を様々なことが巡ります(本書では「エクササイズ」として本を置いて実際に体験することがすすめられます)。
ー心は自分ではなく、自由自在である
「心の動きは自分そのものではない」ということを仏教は定義します。
様々なことに思いをめぐらす心の動きと、自分自身は別である。
静かに「自分の心を見つめる自分」を大乗仏教では「仏性」というそうです。
瞬間ごとに変化し続ける「心」が映し出す感情ーどれだけ激しい怒り、悲しみ、苦しみであっても、それは必ず変わり続けている。
自ら気づいて、払うことができると、雲の隙間から青空がのぞくように、仏性の一端が顔を出してくる。
日常の習慣にできる【行】
心を整えてくれる【行】
●腹が立った時…「私は怒っています」と3~5回、ゆっくりと心の中で唱える
●目の前の家事…例えば「拭き掃除」「アイロンかけ」そのものに集中する
●心の基準点を「朝」につくる
ーどんよりとした気持ちでベッドの中で、いつまでもまどろみ「暗い」自動思考に陥るのをやめる!
ー10分以内に布団から出て「冷たい水を浴びる(顔を洗う!)」!
✔大事なことは「毎日続ける」ということ
✔合言葉は「心の明るさは自分でつくる」ということ
その他にも音楽家・久石譲さんが必ず毎日行っている「行」や、「行」を行うことの効果について、日本の文化に根付く武術の世界などを通して紹介されています。
仏教の真髄【瞑想】
「瞑想はいいらしい」と聞きながらも、なかなか習慣としては取り組めてこなかったのですが…
瞑想は最重要の【行】
【ヴィパッサナー瞑想】
「今、目の前に起きている現実」だけを見続けること
●歩く瞑想:左足、右足と心の中でつぶやきながら歩く=自分の身体との対話
●呼吸の瞑想:複式呼吸で「お腹の感覚」を観察する
続けて、真言密教の瞑想として「真言:短いお経」を唱えることと実際のお経が紹介されています。
実は、祖母が信心深い人だった影響で、幼少期に唱えた記憶のある「真言」が紹介されていました(・・;)
意味を正しく知ることより、「音」の響きが重要だそうです。
…確かに、繰り返し唱える声で心が落ち着いてくるのでした。
【方便】とは、上手に人に影響を与えること
自分の心を静めるだけではなく、社会の中で他人に親切にしたり、貢献したりする「方便」を、「行」と合わせて実践することによって悟りが完成するというのが、大乗仏教の考え方。
菩提心為因、大非為根、方便為究竟
(菩提心を因となし、大悲を根となし、方便を究竟となす)
簡単に現代語訳すると、「迷いから目覚めようとする心を出発点として、生きとし生ける者すべてへの慈悲にもとづき、具体的な実践をすることが人間の果たすべき最高の行いである」となります。
・・・「方便」というのは身近な人への親切はもちろんのこと、仕事で社会に貢献すること、あるいは政治や社会貢献活動に取り組むことなど、ありとあらゆる人と社会との関わりを含むものです。
【日常でできる方便】
●見ず知らずの人への「ちょっとした親切」を入り口にする
●「人には計り知れない可能性がある」と信じること=敬意をもつ
●「共に遊び、戯れる」時間の中で互いに影響を与え合うこと
【感想】プラスαでおすすめしたい本
【感想】宗教には抵抗があったのですが…
この国で生まれ育ち、クリスマスを楽しみ、お正月には神社に初詣に行く…。
一方で、宗教には「神も仏も人間が都合よく創り出したもの」という考えと、過激な「新興宗教」のイメージが強く、胡散臭い、近づかない方がいい…と抵抗感を持っていました。
祖母が、家庭の悩みを託すように仏教系の「新興宗教」を信心しており、息子である父との折り合いが良くなかったことの影響もあるかもしれません。
本書を読もうと思ったきっかけは、著者の名越康文さんに、思わぬ形(YouTube)で親しんだことが大きいです。
精神科医として、いわゆる「科学的ではないもの」を頭から否定することなく、柔軟に物事を捉えるものの見方に共感しました。
最後に紹介されていた「方便」がそのまま実践されている本書は、「教え」というより、「一緒に考えよう」、「共に生きよう」という著者の姿勢が伝わってくる点もおすすめのポイントです。
プラスαおすすめ本:【死の壁】ーバカの壁の続編
解剖学者・養老先生の「死」を巡るエッセー集
「人間の致死率は100%」
「死」を「あってはならないもの」、「穢れ」として日常から切り離す風習があること、解剖学者でも、愛着を持って育てた実験ネズミを殺せなくなったり、検体された教授の解剖は辛いことなど…等々。
発刊から15年以上ですが、コロナ禍の今、あらためて「いつか必ず死ぬ」ということを恐れずに考えるヒントになる一冊です。
【どうせ死んでしまうのに、なぜいま死んではいけないのか?】
中島義道氏の率直な言葉が胸にささります。
「きみがいま死んでしまうと、ぼくは悲しい。だから、きみは死んではいけないのだ…」
今なら、kindleunlimited で無料購読可能です!
最後まで読んでくださり、ありがとうございました☆