ただいま、介護支援専門員再研修参加中のブログ管理者:なんちきです!
脳血管疾患は介護が必要となる原因疾患の第2位。
第1位は「認知症」となっています。
今回の研修テーマは認知症のある方のケアマネジメントについてです。
2017年に自らが認知症になられたことを表明された認知症専門医である長谷川和夫さんが今年出版されたご著書の表題です。
長谷川先生がライフワークとして取り組んでこられたことが、認知症医療ともっとも大切にしたい認知症ケアの要「パーソン・センタード・ケア」の普及でした。
✔認知症のある方のケアマネジメント事例振り返り
✔認知症ケアの要「パーソン・センタード・ケア」とは
✔『認知症の人と共に暮らす時代』
について、お伝えしていきます!
【認知症ケア】ケアマネジメントへの展開
☆画像にある「四つの代表的な認知症について、その特徴とケアのポイントを述べることができる」ということが修得目標の1つ目に挙げられています。
【 アルツハイマー型認知症】今わかっていること
認知症の原因疾患のうち、脳血管性認知症をのぞく3つはいずれも「原因不明で徐々に神経細胞が衰えていく脳変性疾患」。
中でも、最も多くを占めるのが「アルツハイマー型認知症」であり、認知症の原因疾患の半数以上を占めるとされています。
アルツハイマー病は、記憶を司る脳組織「海馬」を中心に神経細胞死を起こし、やがて周辺へと広がっていき脳全体が委縮していく脳の病です。
脳内では症状の出る20年ほど前から、アミロイドβというタンパク質の沈着(老人斑)と神経原線維変化(タウというタンパク質の異常蓄積)が起こっていることがわかっています。
しかし、未だ根本的な治療薬は開発途上。現在、認知症治療薬として処方されている薬剤は、脳内の神経伝達物質の伝達を円滑にすることで「進行をゆるやかに」するものです。
加齢が最大の要因。
誰もが無関係ではいられない病であることを知って、リスクをできるだけ遠ざける生活と、「認知症になっても大丈夫」と思える社会とのつながりが大切です。
生活の中でアルツハイマー病のリスクを下げる方法
●適度な運動:
毎日1時間程度のウォーキング
●睡眠障害を治す:
睡眠はアルツハイマー病の下人となるアミロイドβ沈着を抑制する。目安は6~8時間。
●頭部外傷の予防:
転倒や事故、あるいはスポーツなどでの頭部外傷を予防する。
●適度なアルコールの摂取:
ワインのポリフェノールが話題となったが、酒の種類は関係なく「適量」がポイント。
日本酒なら「1合」が目安。
●動脈硬化・糖尿病・メタボリックシンドロームの予防
●性ホルモンの低下を抑える:
女性は男性に比べ、閉経後に急激な性ホルモンの低下を経験することが、有病率に関係すると言われています。参考:アルツハイマー病は直せる、予防できる/西道隆巨
アルツハイマー型認知症「閉じこもり」事例に学ぶ
2年前にアルツハイマー型認知症の診断を受けていた女性(82歳)
診断当時は家の中での生活に困ることはなく、一人で隣町までの受診や美容院に行くことができていた。去年の春頃に電車の降車駅を間違い、迷ってからは外出は家族が付き添うようになった。
何度も掃除を繰り返したり、調理の味付けがおかしかったり、空焚きなど家事があやしくなり、友人の入院後は体操教室や町内会の行事参加が減少。日中のほとんどをテレビを見て過ごすようになる。
身辺動作は概ねご自身で出来ているが、以前より歩行速度が遅くふらつきが目立つようになり、同居の夫の負担感が大きくなってきたことから、主治医のすすめで介護認定をうける。
要介護1認定となり介護サービス利用を検討している事例。
ICF情報整理シート
ICFに沿った各項目相互のつながりを整理する空欄のシートを埋めた後、「生活上の困りごと」を見極めていく質問演習が続きます。
コロナ禍のグループワークの利点
相互に発表、口々に意見を言い合うという、通常のグループワークとはいきません。まず個人ワークをした結果を順に一人ずつ発表、その後に意見があれば司会の進行に応じて、また一人ずつ話すという方法で、グループワークが進行します。
フェイスシールドorマスクごしの発言となること
これが、思わぬ利点になっています。
聞き取りにくさをカバーしようと一人ひとりの意見に、全体が集中してしっかりと耳を傾ける姿勢ができるのです。
必ずメンバーそれぞれの意見を聞く機会があることで、自分では思いついていなかった考えや、似た考えであっても、言語化してもらえることで、整理しやすくなります。
今回の事例は…同居の夫が、「しすぎ、頑張りすぎ」であることがメンバー共通の認識になりました。
▶以前のようにできないことをとがめる
▶本人のできることも手伝ってしまう
▶過介助になっている介護者も疲れてしまう
本人が役割を失い能力以上に「お世話される人」になってしまうことが認知症を悪化させてしまうリスクになっている。という課題が見えてきました。
認知症ケアの要『パーソン・センタード・ケア』
パーソン・センタード・ケア
1990年前後にイギリスのトム・キッドウッド(1937-1998)が提唱した認知症ケアの理論であり、「その人を取り巻く人々や社会とかかわりをもち、一人の人として受け入れられ尊重されていると本人が実感できるように、共に行っていくケア」のこと。
介護支援専門員実務研修テキスト
認知症である本人の意向・その人らしさをケアの中心に据えること
認知症の事例は、往々にして介護に直面している家族の意向が中心になり、家では大変だからサービス導入という流れになりがちです。
もちろん、介護負担の軽減は大切なケアマネジメントの視点ですが、本人が自分の気持ちを言葉にできる大切な時期こそ、ご本人の持っている能力や、大切にしたいこと、これだけは続けたいことをつないでいく。
人と環境を調整することで、上手に認知症と付き合いながら、昨日から続く今日、明日へとおだやかな暮らしを継続することが可能となる。
研修事例の場合
▶ご本人の望む暮らし「もっと家事を任せてほしい」「以前のように町内活動に参加したい」に着目
▶専業主婦として担ってきた「家事」のできるをサポートする環境(物的・人的)を整える
▶外出の機会を支援する(フォーマル:通所/インフォーマル:体操教室に誘ってくれる近所の方の力)
以上を軸に、通所については、通所リハビリの「居宅訪問指導」での作業療法士支援も視野に入れて、訪問介護・家族と連携していくサービス計画を立ててみました。
『認知症の人と共に暮らす時代』に思うこと
認知症1000万人時代到来
センセーショナルな見出しですが、確実に認知症は身近で「あたりまえ」の存在となりつつあります。
思い出すのは、認知症の〇〇さんではなくて、「人生の先輩〇〇さんは認知症だった」ということ。
そこには、それぞれの唯一無二の人生、暮らしがありました。
ついさっきのことを忘れてしまっても、同じことを何度も言うことがあっても、時々はっとする言葉、いい笑顔を見せてくれました。
自分の親が認知症になるかもしれない。
それどころか、自分自身が認知症になる可能性も十分にある。
ドキッとしますが、近い将来だと覚悟しつつ、「認知症について少し知っている」ということが活かせる人でありたいとあらためて思うのでした。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました☆
☆おすすめ図書☆
▶脳から見た認知症 不安を取り除き、介護の負担を軽くする/伊古田俊夫
2012年の出版ですが、認知症の基礎知識から日常の向き合い方、共に暮らすということについて、温かいまなざしの感じられます。
▶老いた親を愛せますか?それでも介護はやってくる/岸見一郎
「嫌われる勇気」の著者による、両親との思い出をつづった著書。アルツハイマー型認知症の診断を受けたお父様の介護経験から人生、幸福とは何かについて語りかけてくれます。